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ドイツ銀行の株価が意味するものは新たな金融危機なのか?

2016年03月09日
あらためて考えていました。今年2月に、ドイツ銀行の株価は、リーマンショック時の安値を下回りました。
以下はNYSE のUSドルベースの株価。

ドイツ銀行株価月足チャート

これはいったいどういう意味なのだろう?
明らかに考えられることは、ドイツ銀行は、リーマンショックの時点よりも深刻な状態に陥っているということだ。

ドイツ銀行のリリース(リンク)を見ると、2015年通期で68億ユーロ(約8000億円)の純損失(税引後)を計上となっています。

その損失の重要項目として、以下の3点を挙げています。

ドイツ銀行 重要項目

大きいのは、減損と訴訟費用。
訴訟費用だけで、52億ユーロ(約6000億円)です。これは主に、LIBOR不正の損害賠償に係る費用。
減損は58億ユーロ(約7000億円)。これは主に、中国の華夏銀行の持ち分に係るもの。

これだけでも不穏ですね・・・。

これらの損失計上により、ドイツ銀行の自己資本(普通株式等Tier1資本)比率は、11.1% へとダウンしています。この自己資本比率は、BIS規制によって一定以上を維持することが求められています。現行のバーゼルⅡでは8.0%。2018年末までに強制適用のバーゼルⅢでは、10.5%。

このバーゼルⅢの自己資本基準をクリアするために、銀行はCoCo債という劣後債の一種を発行しています。これは、発行した銀行の自己資本があらかじめ決められた自己資本比率(7% や 5.125%)に下がった場合や、規制当局が破綻とみなした場合、全てのCoCo債が強制的に銀行の資本に組み込まれる(つまり発行体の株式に転換される)というものです。この場合、投資家は全部または一部の額面を棄却(write-off)して損失計上する必要が出てきます。

このように通常の債権よりもリスクが高い為に、利率(固定)も高め(7-8%)に設定されています。このCoCo債は、銀行のニーズをとらえてきた為、多額の債権が発行されてきました。クレディスイスの資料(リンク)によると、2014年夏時点では、600億ユーロ(約7兆円)が発行済。さらに、バーゼルⅢの発効までに、新たに4500億ユーロ(約55兆円)が発行されるだろうと。

つまり何らかの危機によって、銀行資本が毀損した場合、これらのCoCo債の価値が無くなる、または一部損失計上を余儀なくされることとなる。銀行の収益悪化が、CoCo債を通して、世界の投資家達(民間企業も当然含まれる)に伝染する仕組みだということだ。しかも、CoCo債の発行額は、無視できないほど多額である。リーマンショックに懲りた規制当局が、バーゼルⅢを通して金融システムの安定化を図っているが、一方で、このような懸念があるということは無視できない。

話はもとに戻るがドイツ銀行。財務データを見ると、2014年末の株主持分(自己資本)は、約680億ユーロ(約8兆円)である。ちなみに、リーマンショック時には、メリルリンチは500億ドル(約6兆円)、シティグループは600億ドル(約7兆円)をサブプライムモーゲージ債関連で吹き飛ばしたと言われている。

一説によると、ドイツ銀行は多額のデリバティブ取引をおこなっているとして、その額、(グロスで)数千兆円とも噂されています。

ドイツ銀行は、アメリカの投資銀行に負けじと、世界各国でかなり積極的にビジネスをおこなってきた世界でも屈指の金融機関です。総資産は200兆円以上もあり、これはドイツ一国のGDP(400兆円)の半分に匹敵する規模です。
(ちなみに日本のGDPは500兆円。三菱UFJの総資産は300兆円、自己資本は9兆円。)

ドイツという国は、中国の目覚ましい経済発展にあやかろうと、中国へかなり積極的にビジネスを展開してきました。政府も親中派で来ました。

フォルクスワーゲン(VW)のシェアがトップであることからも、それが表れています。VW全体の売上高のうち約36%、利益の半分超を中国市場から稼ぎ出しています。

化学大手のBASFも、上海の新拠点をアジア太平洋地区の研究開発の中核と位置づけて、中国に生産や販売など22の子会社を抱え、積極的に展開しています。2014年売上高の743億ユーロ(約10兆円)のうちの55億ユーロ(7%)が中国。

ドイツ銀行は、先に述べた通り、中国の華夏銀行の持ち分に係る多額の減損を計上しています。中国でのビジネスがうまくいっていないことは確かなようです。中国経済の悪化が、世界の懸念となっていますが、その影響を大きく受けるのは、どうもドイツのようです。(もちろん日本もですが・・・。)

中国経済のハードランディングがあれば、ドイツ銀行をはじめとする欧州金融機関に大きな影響を及ぼし、CoCo債を通して、その悪影響がさまざまな企業へ伝搬する。そんな懸念があるのは、確かなようです。

しかし、もっとも心配なのは、ドイツ銀行が抱えていると言われるデリバティブです。政府をバックにして、積極的にビジネスをおこなってきたのはいいのですが、それが一旦、流れが変わり悪い方向へ回り出すと、損失が湯水のごとく湧き上がって来て拡大するのは、リーマンショックで見てきました。

火のないところに煙は立ちません。ドイツ銀行の破綻(最終的にはドイツ政府による救済)、そして、来る新たな金融危機をこの株価チャートは示唆しているのかもしれません。

ドイツ銀行共同CEOは、このように述べています。

「2015年、当行はストラテジーの実施において大きく進展しましたが、下半期において行った必要性の高い決断により、2015年第4四半期および通年においては純損失を計上することとなりました。」

「当行は2016年においても、総力をあげて当行が抱える過去の問題点の解決に向け引き続き邁進する所存であり、事業再編への取組みおよび事業基盤への投資は、2016年も継続していきます。」

事業再編の期間中は困難を伴うことがありますが、当行が引き続き規律ある方法でストラテジーを実施していくことにより、ドイツ銀行はより強固で効率的な、よりよい経営の銀行に生まれ変わることができること、そして生まれ変わるであろうことを確信しています。」

意味深ですね。

参考資料
ドイツ銀行主要財務データ(ドイツ銀行日本法人)

CoCo債への投資(クレディスイス)

CoCo債への投資機会(コーヘン&スティアーズ)

日銀レビュー バーゼルⅢ対応資本性証券について

ドイツ銀ショック(日経新聞記事)

ドイツ銀CDSの波紋(日経新聞記事)

問題児に転落したドイツ銀のハイブリッド債(ロイター)

粉飾決算 脱税と倒産(ブログ)

ドイツ銀行を巡る暗い噂。ドイツ発の世界恐慌の可能性も!?(Harbor Business Online)

世界のニュース(ブログ)

日本や世界や宇宙の動向(ブログ)



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